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「――由美、大丈夫?ちょっと頑張りすぎたんじゃない?」
亮がお粥を由美に食べさせながら言った。由美は布団の上で体を起こしているのだが、額に湿布を貼っている。
「大丈夫、すぐ治るから」
「ただの風邪もこじらせたらダメだから気をつけてよ」
「うん、大丈夫……。
でも、辰也の授業参観どうしようかしら?」
由美がカレンダーを見て呟いた。今日の日付に赤い丸がついていてその下に『辰也 授業参観』と書いてある。
「何時から?」
「11時半からだって。父兄と一緒にお昼ご飯作るみたい」
「じゃあ俺行ってくるよ。だから由美は休んでて」
亮がお粥を一口だけ自分の口に入れた。
「ちょっと薄いかな?」
「ううん、丁度いい」
そっか、と微笑んで亮が立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ行かないと間に合わないから行くよ。
………私服で大丈夫?」
皮のジャケットの袖に手を通した所で亮が尋ねた。
「カジュアルは控えた方がいいかも……」
「じゃあちょっといいやつ着よっかな」
洋服箪笥から亮は服を取り出した。
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