八神辰也

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「お母さん来れないなら来なくて良かったのに………」 辰也がボヤきながらじゃが芋を切る。その隣で亮が玉ねぎを切っていた。 「だってたっちゃんがちゃんと授業やってるか気になるじゃん」 「何それ……。いい年しといて」 「親の年くらい覚えておきな。今年で30だよ。まだまだ若いんだから」 玉ねぎを切り終えて今度はにんじんの皮を包丁で切り取っていく。 「三十路じゃん……」 じゃが芋を水の張ってある鍋に放り込んで辰也が言う。 「あ、言ったな?たっちゃんが食べにくい様ににんじん大きくしちゃお」 悪戯っぽく亮が言ってにんじんを大きめに切る。 「あー、意地悪!」 「好き嫌いはよくないの。ねぇ、太朗先生?」 丁度近くにいた太朗に亮が言った。辰也の担任教師が太朗なのだ。
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