八神辰也

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「太朗って教えるの上手い?」 「普通じゃないの?」 大きなにんじんを亮の皿へ移して辰也が言う。 「じゃあ、いい先生に入る?」 「うん。優しいし、格好いいし、太朗先生はいい先生」 「ふーん……」 辰也が移した大きなにんじんを一口で食べてから亮が口を開く。 「太朗が先生になった理由知ってる?」 「ううん」 牛乳を飲んでから辰也が答えると亮はスプーンを置いた。 「実はね、パパが冗談で言ったら本当になっちゃったの」 その言葉に辰也が牛乳を吹き出す。 「たっちゃん、何してんの」 台布巾で亮が牛乳を拭き取る。 「先生が絶対に教えてくんない事あっさりお父さんが言うんだもん!」 「そうなの?まぁ小学校のとは言ってなかったけど……」 遠目に父兄と話す太朗を見てから亮が呟いた。 「昔の太朗だったら、こんな状況はありえないんだろうなぁ……」
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