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黒板に『私の両親』というタイトルが書かれている。そして、そのタイトル通りに作文を書いた物を児童が発表するというベタな授業だった。
「――はい、ありがとう。それじゃあ次に……八神辰也くん。発表して」
児童がまた1人読み終え、太朗が言った。すると辰也がとても嫌そうな顔をする。
「先生、パス無し?」
「無し。ほら、立って読んで」
きっぱり太朗が言うと辰也が立ち上がって手にした作文を読み始める。
「僕の両親はまだ若いです。お父さんはロックドラムが得意で音楽教室でドラムを教えています。お母さんは主婦だけど、たまに絵を描きに1人でどっかに行っちゃいます。お父さんは、何だか……」
そこで一旦言葉を切り、辰也はちらと後ろにいる亮を見た。
「……お父さんは正直、あまり好きじゃないです。よくからかわれるし、いつまでも子供扱いします。それに休みの日が全く無いかと思えば何週間も休みの日もあります。だから、嫌いじゃないけど苦手です」
「ありゃりゃ……」
誰にも聞かれない程小さく亮が呟いた。
「でも、お父さんは友達には大人気です。気楽でいいな、とか勉強勉強ってうるさくなさそうでいいなとか言われます」
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