白鳳冬樹

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黒い夜空に幾つもの星が瞬いている。穏やかな風が吹き、親子の髪をなびかせていた。 「………やっぱり窓から見るよりも綺麗に見えるねぇ……」 じっと夜空を見上げながら亮が言う。 「変わんないと思うけど?」 そう言う辰也も夜空を見上げるが、つまらなそうな顔をしている。 「まだまだたっちゃんは子供だねぇ」 笑い、亮は辰也の頭に手を置いた。 「子供扱い止めてってば」 「じゃあ、たっちゃんの弟か妹が産まれたらね。普通にいけば10ヶ月後くらいかなぁ」 「それ。気になってたんだけど……何のこと?家族が増えるとか何とか……」 辰也が未だに夜空を見上げる亮を見て尋ねる。 「だから、由美が妊娠したんだよ。しかも2ヶ月だって……。こりゃパパ転職しないとなぁ」 「転職?自分で勉強は出来ないって言ってるのに宛てあるの?」 「あるよ?勉強には関係がないけど」 辰也に目を向け、ゆっくり亮が言う。 「パパね、大学の講師にならないかって誘われてるの。そこでドラムを教えてくれって。お給料も良くなるし、悪い事はこれっぽっちもないんだよ」 「じゃあさっさと転職しちゃえば?」 「………そう、なんだけどねぇ」 亮の声が少し気落ちするのが分かる。
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