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「悪い事ないんでしょ?」
「ないよ。でもね、今教えてる人とか、関わってきた人とかを放り出しちゃう気がしてねぇ……。正直、いい気しないんだよ」
亮がため息をついた。
「そんなら止めちゃえば?」
「だから迷ってるんだよ。どうしよっかなー、って」
どこからか、静かにギターの音が流れてきた。それを聞き付けて亮と辰也が少し離れた場所にあるベンチを見た。
そこに居たのは高校生ほどの男性。縮毛のかかった髪の毛は下に向かい、端正で綺麗な顔をしている。ベンチに大きなリュック――太い縄で持ち運び出来るアンプと薄いCDプレイヤーが結ばれている――と蓋の空いている空っぽのギターケース。それにエレキギターの入っているソフトケースが置かれている。
「こんばんは、亮さん」
その男性が言うと亮は少しだけ驚いた顔をした。
「冬樹……?」
「やっぱり分かんないのかな?こないだは母さんにも誰か分からないって言われたし」
そう言い、男性――雄也と善の弟である冬樹――が静かに微笑んだ。
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