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白田はやっと全てを思い出した。
「そうだ。金だ!
金が問題だ!」
「うるさい!静かに寝てろ!」
白田は警察の声など聞こえていなかった。
ただ思い出せたという幸福感に包まれていた。
そう、ことの初めは木口組に何かとうるさい三坂組がついに敵になった事が始まりだ。
それはちょうど去年の事だったんだが、三坂組は兵隊の数や幹部の連中など、何に置いてもこっちの方が数倍不利である。
そして木口さんが一年経ってこれから色んな理由で戦争になったとしても、組を苦しめるだけだと思ったのか、盃を交わそうと決めていた。
(「盃」…敵の組と組がこれまでの関係を無くすこと。)
しかしそれに反対の構成員だって沢山いる。
特に幹部の芝山健太はかなり怒り狂っていた。
「ふざけるな!まだ何も起きてねえだろ!?一年しか経ってねえのにいきなり盃交わすなんて、んなもんわしゃ反対ですぜ!」
「いや、違うんだ、わかってくれ、芝山。
これには…」
「はあ?何を分かれっていうんですか?わしらの相談無しに、ふざけないでくださいよ!」
そこまでの会話を聞いた若頭の俺が言った
「っせえ!組長はなぁお前らの事を考えて、毎日毎日悩んで悩んで悩みまくって決めた事なんじゃ!
その木口さんの気持ちを何も知らねえお前らが横から首突っ込んでんじゃねえよ!」
「じゃあなんだよ?俺たちのことを気配りしてりゃ、何してもいいのかよ!?」
「何してもなんて一言も言ってねぇだろうが、こんハゲ!」
「お前らやめろ!」
「……………」
しばらく静まり帰った。
「とにもかくにも、今は盃が必要なんだ。
分かってくれ」
「チェッ!失礼しました!」
そして木口さんが回転椅子をぐるりと回し俺に背を向けた
「頭、俺何か失礼だったでしょうか?」
「ふぅ」
タバコをすってリラックスしている組長。
「あの…なんか、すいませんでした。
また出直して来ます。」
俺は見てしまった。
頭が泣いている姿を。よほど組のことを思っているんだろう。
俺も木口さんのそんな気持ちも知らずに、芝山と派手に喧嘩してしまった。
……翌日
ついに木口さんは盃を決意した。
金と盃表を持って三坂組のある東京に行くことに。
俺と頭はまだ、この盃が、悪夢のゴングだとは知らずに…
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