数十秒の奇跡

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 これは太陽が頑張ったおかげで気温が上昇し始めたある一日の物語……  一日の中で最も気温の上昇する正午を少し過ぎた頃、一人の男は自転車で学校へ続く上り坂を駆け上がっていた。  この日の自分達が通う学校ではテストと言う名の悪がのさばっていた。定期的に生徒を苦しめるための悪意の塊、テスト…  全く恐ろしい響きだ。 なんて考えながら坂を上がる。この坂は長い、まだ平面を走ることは出来ない。  しかし、一部の生徒はこの悪意の塊を利用しようとする。午前中でテストを終えて、家で寝るもの、遊ぼうとするもの達のことだ。提出物を出し、成績も平均以上の殊勝な奴らだ。  そんな連中がいる中、いま自分は出し忘れた提出物を学校に運んでいる途中だ。一度でいいからそっち側の人間になりたいよ。  この日のスケジュールは午前中テストで午後から部活だ。しかし、この忌まわしい、本当に忌まわしい提出物を出さなければならないので部活には遅れて行くことになる。  ついに学校に到着。提出物を出して部活へ行く。当然のことながら部活はもう始まっている。だが、いつもと比べて雰囲気が違うことに気づく。何と言うか少しピリピリした感じ。  何があったのか聞いてみると、どうやら部室の掃除中に財布がパクられたらしい。
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