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「…あたしも、ゆずちゃんのこと好き。」
「だよね。よかったぁ…」
こんな展開でも緊張してたみたいで、肩の力が抜けたんがわかった。
と、そこに丁度いいタイミングでチャイムが鳴る。
「そろそろ帰ろっか?」
時刻は3時20分。
3年の私たちは部活もないし、ここに先生が戻ってきてもなんか恥ずかしいし。
「うん。」
「そこにあるプリントに記入して帰ってーって先生言ってたよ。」
「おっけー。」
互いに気恥ずかしくて、言葉を交わさないまま片付けが終わる。
それでもこの雰囲気は嫌いじゃない。
「香苗、準備できた?」
「うん、行こっか。」
2人で歩く帰り道。
あの後体育がどうなったか、とか他愛ない世間話をしながらゆっくり歩く。
元々家が遠いからすぐに別れ道にたどり着いた。
「………」
離れがたい、よね…
あ、そうだ。
「もう体調大丈夫?」
「うん、全然平気。」
「うーん、でもボールぶつかったの頭だったよね…本当にごめん。」
なんかパス回してくる男子に乗せられたよなぁ…私のバカ…
なのに香苗は慌てた顔でフォローしてくれる。
「ゆずちゃんは全然悪くないよ?勝負はいつでも真剣にやらなきゃなのに、あたしがぼーっとしてたのが悪かったんだし。」
「でも、そのぼーっとする原因作ったん私だし。本当にごめんな。」
「そんな、謝らないで?あたし、大丈夫なんだから!」
「じゃあさ、もし家帰るまでに何かあったら困るし香苗のこと送っていってもいい?」
そう、これに話を持ってきたかったんだって。
うっかりネガティブな方に進むとこだった。
「うん、それでゆずちゃんの気がすむんなら。」
…ちょっと違う受け取り方されちゃった。
とりあえず香苗の家がある方に向かいながら続ける。
「えーっと、じゃあ気がすむまでずっと香苗のこと家まで送っちゃうよ?」
「いいけど、ゆずちゃん大変でしょ?」
「全然平気。だって毎日葵と帰れるんだよ?」
「…あぁ、そういうことかぁ。ゆずちゃん賢いね。」
「でしょ。」
我ながら名案やよねー。
とかアホなこと言ってるうちに、もぅ香苗の家に着いちゃった。
「香苗の家ってここ?」
「うん。あがってく?」
「んー、もっと離れづらくなるからやめとく。」
「そっか。」
今も帰りがたいけど、香苗も早く休まなきゃだしね。
よし、じゃあ今日は帰るぞ!
「じゃあまた明日。」
「あ、待って!」
「なに?」
せっかく帰るって決心したのに。
「えっと、あの…その、最後に…」
真っ赤な顔で、香苗は小さく囁いた。
「キス、して?」
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