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ジリリリリリリ…
カチッ
やかましい目覚まし時計に手を伸ばし、止める。
外はまだ暗いが、時計の針はいつも通り定刻を指し示している。
また憂鬱な一日が始まってしまった。
ホームに到着した電車の扉が開き、堰を切ったように人が流れ出る。
僕も流れに逆らうことなく、押されるままに歩く。
自動改札を抜け、ようやく僕が自分の意思で歩けるようになった頃には、もう太陽がしっかり顔を出していた。
駅の階段を降り、いつものバスに乗り込む。
いつも通りの変わらない日常。
唯一いつもと違うのは、僕の頭の中で、昨日の青年の歌がしきりに流れていたことぐらいだろう。
あんなに音楽に衝撃を受けたのはいつ以来か。
ひょっとしたら初めてかもしれない。
とあれこれ思考を巡らせていると、聞き飽きた停留所名を喋るアナウンスの声がして僕は慌てて降車ボタンに手を伸ばした。
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