魔法使い、現れる

3/3
前へ
/6ページ
次へ
「秋野さんもウィズのファンなんですか?」 仕事場の昼休み、後輩の中川が唐突に話し掛けてきた。 「…なんの話だ?」 聞き返すと中川は、やだなぁ、と笑いながら僕に言った。 「"ウィズ"ですよ。秋野さん今、ウィズの曲口ずさんでたじゃないですか。実は僕もウィズ聞いたことあるんです」 そう言いながら僕の隣りに自分のイスを持ってくるあたり、どうやら喋りたいらしい。 「さっきからウィズ、ウィズって…何のことだか僕にはさっぱりなんだが」 すると中川は驚いたように、 「ええ??ウィズってあの駅の東口にいつもいるストリートミュージシャンのことですよ!」 と言った。 僕の脳裏に、昨夜からずっと頭から離れようとしない青年の姿が浮かび上がる。 「あぁ…彼のことか」  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加