序章

2/2
前へ
/80ページ
次へ
      2月14日。 世には甘い匂いが満ち溢れている。 女子はチョコを買い求め、男子はチョコを貰う事を切望し、意味もなくげた箱や机の中をまさぐっては一喜一憂する。 「バレンタインなんて、所詮は製菓会社の策略なのさ」 とはモテない男の常套句。 そんなヤツほど、往々にしてバレンタインに対する関心は並々ならぬものであるのだ。 とはいえ、そんなオレこと宮沢アサトも、今回のバレンタインデーには、思い入れがあるのだ。 きっと間違いなく、げた箱を何回も念入りに調べ、教室で女子の視線を気にしては意味もなく黄昏ていたりする事だろう。 女子の視線とはもちろん、特定人物のものだけを指す事は言うまでもない。 ──朝霧アキ。 当日の彼女の行動にオレは振り回される事になるのは目に見えている。 そして何より、彼女の本命チョコ!! その行方は果たして誰のものになるのだろうか。 それがバレンタインデー1週間前からのオレの不眠の原因ともいえる。 そんな男女の期待と不安と思惑を乗せて、バレンタインデーは訪れるのだ。  
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

500人が本棚に入れています
本棚に追加