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母の呼吸、心拍ともに停止していた…
ほどなくして救急車が到着し、キッチンから救急車の移送中も懸命な蘇生措置を行なっていた。
「お願いです…助けて下さいっ!母さんを助けて下さいっ…」
和海は必死に蘇生措置を行う救急隊員に嘆願し、ただただ母の手を握りしめることしか出来なかった。
救急車は、偶然にも、父が小児科医として。兄が研修医として勤める都内有数の大学病院に到着した。
母が救急救命室に運びこまれると、和海は閉め出された。
「母さんっ!」
しばしその場に立ち尽くし、呆然と母を見送る和海だったが、次の瞬間、涙を拭くのも忘れ、ぼやけた視界のまま、和海はナースセンターに走りこんだ。
父と兄を呼ぶように目の前のナース達に叫んだ。
救急救命室の前のベンチに座っていると、血のついた白衣を着た医師が出てきた。
「西嶋さんだね?」
和海を一目見て、すぐに医師は声をかけた。
赤黒いそれは、真新しい今付着したと思われる湿り気が見てとれ、恐らく母のものと間違いないであろうことが高校生の和海にも容易に分かった。
生唾を呑み込みながらうなずくと、その医師は淡々と
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