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「ど…どなただっけ?」
覇刀を構えた男は片方の肩をカクッと落とした。
「この馬鹿…やっぱり引っかかってやがったかよ…」
言いながら振りおろす剣を躱わし、返す刃を槍で止める。
何故か殺気を感じない剣撃を受け止め、互いの体で押し合う状態になるとエルガーが俺に「このまま聞け」と小声で話しかけてきた。
「いいか、用件だけ伝えるからこのまま俺と暴れろ…まず、俺はお前の味方だ」
激しい金属音で弾き合う覇刀と朱槍が火花を散らす最中にエルガーは俺にそう告げた。
「そうか、まぁ殺気もねぇし…信じるぜ、どうしたらいい?」
再び鍔競り合いになるとエルガーが俺の問いに答え始めた。
「今、お前は竜撃兵団に狙われてる…どこの村に行っても竜撃兵団が待ち構えている状態だからな…」
シオン達が居ないとは言えまだエルガーの部下が居るため、激しさを増す攻撃を交互に繰り返しながら話すという器用な戦いを俺とエルガーは続けていた。
「俺の力でこの工房の二階を吹き飛ばす、どさくさに紛れてお前は樹海に逃げろよ…いいな―――!!」
再度俺達が距離を取った時、エルガーの右腕を黒い螺旋状の風が包んでいた。
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