異変

9/9
前へ
/182ページ
次へ
「エルガー!!」   言葉と共に拳が飛んで来る。   気が付くと俺は瓦礫に吹っ飛ばされていた。   「ワシは…ワシはお前という奴を心底見損なったわい!!」   「わりぃが…謝罪する気はないぜ、現に奴はこの工房に居たんだからな…」   空を見上げる状態のままで俺は船大工の親方に言った。   親方には悪いが、今は俺が完全に竜撃兵団の一員だと思ってもらわないとならない。 親方の性格を考えると、間違いなく婆さんみたいに上手くはぐらかす…という器用な真似は出来ないからだ。   瓦礫から体を起こして俺は婆さんと親方を見ずに通り過ぎた。   口の中切れたか…鉄の味になっちまった。   しかし…キドウは上手く逃げたかな…アイツは色んな意味で逆境を引き寄せるみたいだからなぁ…。   て、このザマじゃ俺も人の事は言えねぇか…   今の状況に俺は苦笑しながら口元の血を拭った。   その後ろで婆さんになだめられている親方が、俺に何かを叫び続けていた…―――
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加