迷走

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「本当なら放っておくつもりだったが…我が竜撃兵団と敵対し、あのフォグが早急に殺そうとする人物に会ってみたくなってな…」   完全に顔を覆っている兜をしている為に表情は分からないが、薄く笑っているように思えた。   「ほっといて貰えると助かったんだが…じゃあアンタは俺を仕留めに来たのか?」   首を横に振りながらシュレイゼは一歩前に出て剣を抜いた。   「それならばこの剣を一振りすればいい…だが残念ながらその逆だ、キドウ…私の仲間にならないか?」   錆びた鋼龍の素材から作る剣を抜いたシュレイゼからは、先程よりも激しく鋭利な殺気が放たれた。   「断る…と言ったらその普通とは『違う』剣を一振りしちゃうわけだろうが…断る」   普通ならこの殺気を当てられただけで腰を抜かす程だが、シュレイゼが持っている剣を見た瞬間…何故か俺は殺気が気にならなくなっていた。   「そうか、残念だ…だが…この剣を抜いた私の殺気を前にして平然とするとは…―――か…」   シュレイゼは俺に背を向けると剣を収め、独り言の様に何事かを呟いた。   「キドウ…やはり今はまだお前を殺す必要は無い様だ……」
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