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「今日はね、裕くんにプレゼント持ってきたの!」
にっこり笑って伽那は言った。
なんだかとっても楽しそうである。
「…プレゼント?」
開口一番にそれを言うものだから、裕介は聞き返してしまった。
誕生日でもない、まだ退院でもない。裕介がプレゼントなるものをもらえる理由は特になかった。
首を傾げていると、先程まで点字の紙を広げていたベッドテーブルに、どさりと音をたてて何かが置かれる。
更に考え込む裕介。
「何だと思う、裕介?」
彼にそう問いかけるのは貴志だ。
冷静なところから、貴志もこの企画者なんだとわかった。
裕介はとりあえず、と目の前のものに手を伸ばす。恐る恐る触れると、それは紙でできていた。当たり所によってはチクチクする。
「えっと…千羽鶴か?」
紙の折られている様子やそれが一つだけではないところから、裕介はそう答えをだした。
すると、伽那は喜々として頷いた。
「当たり!裕くんすごいね」
「…まぁ、これだけあれば普通わかるだろ?」
「でも、すごいよー!あ、あと、これとこれも!!」
今出したばかりの千羽鶴を端に追いやり、次に取り出すのはカセットテープとガサガサと音をたてる大きな袋。
「えーっと…」
「テープは後にして、先に袋!」
どちらから手を付けようか迷い、固まっていると、伽那が袋と急かした。
その袋は触れただけでも簡単に音をたてる。少々耳障りに思ったが、構わず袋の中の物を引っ張り出した。
出てきたのは手触りからして服。
「…何?」
とりあえず変な物ではないことに安堵し、それを何か見極めるためにぺたぺたと触る。だが、わかったのはファスナーとポケットがあることだけ。特定まではできなかった。
首を傾げていると、見かねた貴志が口を開く。
「それ、新しいジャージ。もちろん裕介の」
「え?」
思わずもう一度服に触れる。確かに言われればジャージの素材だった。
「てか…何で?」
一番疑問なのはそのことで。
千羽鶴はともかく、ジャージをもらう理由などない。
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