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『おせち配達の話』
毎年年末になるとやってくるおせち。
コレは俺たちにとって一年を締めくくる一大イベントだ。
いつも以上に気合いをいれて徹夜で仕事をするワケやけど、2年前ぐらいの話です。
おせちも盛り終わり、個人の店に勤めている俺は人手が足りない為、車での配達にも行かされるワケですよ。
カーナビを搭載しているにもかかわらず使い方をあまり理解できていない俺にとって、個人の家を住所だけで探すのはとても困難な仕事でした。
地域によっては、まったく土地勘がなく、全然わからなかったんです。
そして「サクラギ」さんと言う家がどうしてもワカラず、必死で探していたんです。
自力ではどうしようもない…と途方に暮れているとジジババが井戸端会議をしているトコロに出くわしました。
徹夜の為にブルーだった俺は車の窓をあけ
「すいません…このあたりにサクラギさんって家あるハズなんですが知りませんか?」
と、尋ねました。
すると、その中のヒトリのジィさんが
「失礼なヤツやの!車から降りて聞け!」
と瞬ギレしたんです。
まぁ確かにそりゃそうやと思い、車から降りて改めて、
「サクラギさんの家を教えてもらいたいんですが。」
と言いました。
すると
「よっしゃ!ワシについてこい!車やと入りにくいからココに車置いとけ!歩いていくぞ!」
とジィさん気合い全開でノリノリでした。
こういう豪快なジィさんが好きな俺は
「助かった…やっと見つかる…」
などと思いながらジィさんとタッグを組み、ジィさんと俺という不思議なパーティが完成しました。
ジィさんの後をついて5分ほど歩いたトコロでジィさんの足が止まりました。
「あの坂の上の家がそうじゃ!」
と、ジィさんが指さす方向を見ると100mぐらい急な坂の上に家が立っていました。
「ありがとうございます!」
と俺が言うと
「じゃあの」
と言いながら振り向かずにジィさんは去って行きました。
ジィさんの背中から昭和を生きてきた男を見て
「ありがとう…ジィさんありがとう…」
と、心の中で感謝をしながら坂を上りました。
息を切らせて上りきり、インターホンを押そうとして俺は固まりました。
表札をみると、
「サクライ」
俺がもしフリーザだったら目から紫ピンクの出すトコだったわ。
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