4人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「…遅くなりましたわ、お母様」
青い朝を司り閑静たる墓場にロストールの新たなる女王…ティアナは訪れた。朝日が照らされる黄金の髪は女神を思わせるかのように光輝き、意志の強い瞳がまっすぐと一つの墓石を見つめる。
「お母様、話したいことが沢山ありましたの。…でも、いざこうすると不思議と何を話したらいいかわからなくなりましたわ」
淋しそうに、それでも笑おうとするティアナ。
「姫さんの思うことを話せばいいさ…心で思うことをな」
光を取り戻したとは言え、国内に不穏さが消え失せたわけではないので、婚約者であるゼネテスが女王陛下であるティアナに付き添う形となった。
「ま、伯母上なら姫さんがこうして来てくれただけで喜んでいるだろうに」
即位が終わってもゼネテスは呼び名を変える事無く、またそれをティアナは咎めようとしなかった。ティアナにはロストール復興に尽くすことを誓う反面、その責任の重さから逃げ出したくなるのを彼の呼び名が和らげていた。
最初のコメントを投稿しよう!