プロローグ

9/27
前へ
/29ページ
次へ
その花が母が好きな花だと知ったのは死後のこと。とてもお母様に似合う花。  お父様が婚前にお母様に送った花だと聞いた。そして、後にも先にも一度だけの贈り物だったというこたも。 「お母様…恨み言などいまさらいいませんわ。死んだ方に勝てる方法などありませんもの」  ただ一人で国を守ろうとした母の背中。決して隙を見せず懍とした姿は美しく、…私を見ることはなかった。幼い私はずっとそんなお母様を見ていた。幼心にお母様が私を見てくれることをライラネートに毎晩眠りに就く前に祈った。 …今と同じように。  聞き届けられたことなんてないと信じていた。それでも祈ることしか出来なかったあの頃。 「お母様…」  瞳を真っすぐに亡き母を見据える。 「私はお母様のようにはなりませんわ。そして、『私はフォーロス家を発展させるための道具になるつもり』もありませんの」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加