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「こんなものの性で」
晒された肌、彼のその胸には。
毒々しいとさえ感じる、不可思議な紅い紋様が刻まれていた。
封魔の印、という魔術がある。
それは魔の眷属の力である魔力を封じる、もしくは対象の魔族そのものを封じ込む術だ。
アレイストの胸に刻まれている紅い紋様は、正にそれであり、しかも高等な術の類である。
それは優秀な術者の血と命を引き換えに発動させる禁呪。下手な魔族なら、その術の重さに耐え切れず、封じられるどころか跡形もなく滅びてしまうほど強力な。
しかしそれほどの禁呪でないと、この男を封じることなどできなかっただろう。やはり魔王と言う異名は伊達ではないらしい。
この封魔の印は、彼を手に入れた時には既に刻まれていた。おそらくクラウディアが攻め入った、あの戦いのさなかに掛けられたものなのだろう。
人を遥かに逸脱した生命力、回復力を持つ魔族にも関わらず、彼を発見した時にもまだ戦いの傷が癒えていなかったのも、そう推測すれば頷ける。
禁呪は魔力のみならず、生命力、回復力すら著しく奪ってしまうのだ。
両親を殺した時も、彼は魔力を一切使ってはいない。それは魔族特有の逸脱した身体能力……つまり力技のみである。
「魔力を封じられた今の貴方はただの人間と変わらない。……まあ、その身体能力は別としてね」
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