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はだけた彼の胸に手を当て、その紋様を指でなぞる。
「しかし、魔族であることには変わりないから。……この部屋からは出ることはできない」
この部屋には、魔を封じる結界が張り巡らされていた。
それは魔力を全く使えない人間でも、必要な道具を用意すれば簡単に行える低度なものであったが、今の彼ではそれすら破ることができない。
故に魔王は驚くほど簡単に、呆気なくも閉じ込めることができた。
「……哀れだね、アレイスト」
ふいに、笑みを消してイシュカは囁く。
「哀れだね、悲劇の王よ 」
その声色はどこまでも優しく、柔らかいもので。
けれど、その表情はどこまでも冷たく、まるで人形のように熱を宿さない。
「貴方は哀れだ」
「……」
「貴方にはもう何もない 」
「……黙れ」
「失ったから」
「黙れ」
「そう、奪われたから」
「いい加減にしろ」
低いその声が、一層低く、冷たくなった。
鋭いその視線も、また。
比例する、鬼気の壮絶さ、それを濁していくかのように混合する……殺意。
嗚呼、やばい。
どこか呑気な呟きを心中で漏らした次瞬、かくんと僅かに視界が揺れた。
それが、彼の手が自分の首に掛けられたことによるものだということに気付き、またやばいと心中で呟く。
けれど、抵抗はしなかった。
その手には、僅かな力しか込められていなかったからだ。
「 ……イシュカ 」
その声が、低いくせによく透る声が、自分の名前を紡ぐ。
眼前すぐそこには、壮絶な金の双眸。人外特有の禍々しき輝き、美しき冷たさ。
それは酷く、そう酷く。
「……イシュカ」
「アレイスト」
……心を、魂を魅了する。
「わたしを殺すかい?」
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