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この城の殺伐とした空気も、そのような背景により未だ立て直せてはいない、と言うわけだ。
「……ああ、もうどうにでもなればいい」
無駄に豪華で長い通路を歩きながら、イシュカは心底嫌気が挿したかのよう吐き捨てた。
この事件によって、彼女は余りにも不合理に両親を失ってしまった悲劇の王女になってしまったわけだが、現実と王家はそんな彼女を優しく擁護してくれるほど、甘くはなかった。
国王が没した後、王位継承は側室の子供である、彼女の異母弟に与えられた。
クラウディア国は男女関係なく、一番最初に生まれた子供が王位を継承する習わしがある。故に歴代国主には女性も少なくはない。イシュカはクラウディア国第一子だ。今まで国の流れからすれば、イシュカが王位を継承するはずだった。
だが、それはイシュカではなく、第二子の異母弟に与えられた。それは、何故か。
--あの、女狐め。
なんとも言えないぬるーい笑みを浮かべ、イシュカは心中でそう毒づいた。
クラウディア国国王の側室、つまり現クラウディア国国王である異母弟の母親。彼女の存在がイシュカを陥れた。そりゃあもう、したたかな女だったのだ。
彼女は前国王すら気付かぬ内に国の重臣を取り込み、虎視眈々とその機会を伺っていたらしい。
それに気づいたのは、前国王とその后が没した直後である。その直後から、それまで彼女に従服していた全ての者が、呆気なくも手の平を返したかのよう離れていったのだ。
そして皆が皆、口を揃えて言った。次期国王には、第一王子が相応しいのだと。
謀られた。そう、思った。ただ純粋に。
それに加えてその他諸々のゴタゴタがイシュカを襲い、あれよあれよと言う間に気づけば弟が冠を被り、自分はそれをただ眺めているのみの状況。
そんなわけで現在彼女の立場は非常に肩身が狭かった。
もはや王女という位は唯の肩書でしかなくなってしまったと言っても過言では無いだろう。
なんの権利も権力も与えられず、ただ城で呆然と暮らすつまらぬ日々。怒りも悲しみも、全ての己の意思を表示することすら許されない現在。
全てにおいて蚊帳の外に追いやられた彼女にとっては、蚊帳の外からの目線による意見としては、全てがくだらないと吐き捨てるに値した。
もう、どうでもよかったのだ。
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