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 結局は、揺らいだのです。  私は、知るだけの存在。なのに、手を出してしまった。私が変わったのかと聞かれても、たぶん、変わってないと答えます。今回だけ、特例なのです。たまたま、清水の境遇が、父親と被ってしまったために、つい、知るだけでなく。自分から知らないようにした、情報を止めた。情報が漏れないように、手を出した。 ありえないこと、です。だって、いつもコソコソと知ってばかりの私が、このように話に突っ込むなんて。  今でも、夢ではないかと思うばかり、です。  夢の方が良かったとは、思いませんけど。  ただ、一つ言えることは、自分自身が特例を認めることができた、ということです。  知ってばかりの私が、行動に出た。そのことを、私自身が容認しているのですね。だから、少し言えることがあるのです。  どうしようもない私が――いつかは変われるかもしれないということが。  そんな、ありえないことがいつか起こるかもしれない。そう、思うのです。  何となくですけど。  そう、何となく。  その数日後、私のもとに一通の手紙が届き、私は、とあるホテルへと向かいました。  それから起こる、すべてのことを知らぬまま。         end
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