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プログラマーだった父親の仕事を手伝おうとして、パソコンにおける能力を鍛え続けてきた私は、いつの間にかハッカー、もしくはクラッカーと呼ばれる存在となっていました。本来、そういったものになるつもりはありませんでした。けれど、結果として、私は力を手に入れました。父親は過労死してしまい、私 は悲しみに包まれました。その時に、父親が勤めていた会社を全力で潰して以来、私はさらに自身の能力を有効活用するようになりました。
才能。それがあるとは、思いません。ただ、自分の欲望に素直なだけ、です。
「……です」
デスクトップに表示される、数々の他人から他人へのメールを次から次へと読み込んでいく。これは日課。日課というよりも義務のようなものです。後から知らなかったと後悔することは、最も避けたいことです。
けれど、あり得ないほどの数のメールが、他人と他人との間に行き交っているのは事実です。私が指定しているのは百人ほどの携帯電話ですが、一人頭三十通は一日に送っています。少なくても、一日千通、多い時は一万通のメールに目を通すことになります。それでも、苦ではないです。知ることは、私の望むこ とですから。
知って、知って、知って、知って、知って、ただそれだけです。
今までそうしてきた上、これからもそうするのです。他人のためにではなく、自分のために。
「……」
これからも、そうしていく――と思ったところで、一通のメールに目が留った。
『さっさと宿題のコピーを送れよ』
送り主は、同じクラスの金持ちの息子、送り相手は同じクラスの大人しい女の子。金持ちの息子はいつも高圧的だから、こうことがあるかも、と一瞬思ったあと、妙な勘が働いて、この二人の関係を調べ始める。
クラスの人間はおおよそ、どんな人間か理解しています。誰が、誰を好き、誰と誰が付き合っていて、どのくらい勉強ができるのか、どんなことを想いながら毎日を過ごしているのか、詳しく。
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