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彩の謁見室は、石造りで、この500年、少しずつ修復しながらも、変わりがない。
…毎日見てるからわからないだけかもしれないが。
赤い絨毯の先には玉座。美しく金糸銀糸で縫いとられ、部屋全体は青が基調となっている。日の光がさす昼間は、晴れた日の水底の様に美しい。
そんな謁見室は、現在かなりの緊張に包まれていた。
「…どういう事か、私に解るように説明していただけます?」
私はにっこり微笑みながら国王・白夜(ビャクヤ)に向かい合う。
王は蛇に睨まれたカエルのようにダラダラ脂汗を流している。白亜と同じ青銀の髪。瞳は青い。彼は直系の王族ではなく、婿養子だった。しかし、王として国のために尽力している。私は、そんな王におもいきり笑顔で重圧をかけていた。
見かねて文官の1人が叫んだ。
「国政に、貴女のような教育係風情が意見するなど、もってのほかだ!」
叫んだのは、まだ年若い文官だ。他の文官達、特に上の者達が一斉に青ざめる。王も然り。
私に意見する勇気は認めるが、引き下がるつもりなど全くない。
私だって国政に干渉すべきでないことぐらい、解っている。しかし、娘同然の白亜の未来がかかっているなら、話は別だ。
白亜は母を早くに亡くし、本当に娘のように私が育てた。
白亜が幸せになる為なら、何だってしてみせる。
私はまだ年若い文官を冷たく見据えると、思いっきり殺気を飛ばしつつ言った。
「お黙りなさい、坊や」
ひっ、と小さく悲鳴をあげ、年若い文官は青ざめ、黙りこんだ。
余談だが、この時更に体感温度が10度は下がったと、王は涙目で語った。
「答えなさい、白夜」
「し、仕方ないのだ!従わねば森に火を放つと!!」
もはや、やけくそ気味で叫ぶ国王。私はため息をついた。
「それで?要求を飲んでも、相手がつけあがるだけではないの?」
ぐ、と言葉に詰まる白夜。
「ねぇ、可愛い娘を不幸にするつもりなんてないわよね。私のお願い、聞いてくださるかしら、陛下?」
青い瞳に諦めが見えた。
もう、私に逆らうことなど誰もできなかった。
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