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茶希は鋼へ行くための荷造りを終え、一息つこうという所で妙な音を聞いた。
コツン。コツン。
誰かが窓に小石を投げている。
茶希の部屋は3階であり、まずあり得ないが茶希は知り合いに2人ほど実行可能な人物が浮かんだ。窓を開け、外を探すと予想通り朱里と朱花がいた。予想外だったのは、白亜が居たことである。
慌てて外に出る。
「ここでは大おばあ様に見つかってしまいますから、移動しましょう」
朱花が夕海を喚び、場所を移動した。
赤い『紅』の花畑。
この国の特殊な聖域。強い精霊がいるわけでないのに、一般人は…王族すらも気軽に入れぬ場所。密談には最適だ。
「朱里と朱花は明日の事で用があったんだとして、白亜は何の用だ?」
茶希は早速本題に入った。白亜はにっこり笑う。とびきりの悪戯を思いついた時の表情だと、朱花は思った。
「私も行くから」
茶希は固まってしまった。せいぜい無理しないでとかの別れの挨拶だと思っていたから、全くリアクション出来ない。
白亜はそれを予想していたのか、気にせず言葉を続けた。
「私、シオン様をお兄様みたいに思ってるの。紅様は、お母様。だけど、あの2人、やなとこ似てて、ムカつくの」
「やな…とこ?」
朱里が聞き返す。白亜はうなずき、本気で嫌そうな表情になった。
「あの2人、自分が死んでも、構わないと思ってるの。自分に価値が無いって。さすがに紅様にはしないけど、シオン様は平手打ちしたわ」
「…シオン様、怒りませんでしたか?」
シオンはアレでも針の王だ。機嫌を損ねたくない。心配そうに朱花が尋ねる。
「びっくりしてたわ。考えたこともないみたい。紅様にちょっと針の事聞いていたけど…仕方ないのかもしれないけど、私は嫌!紅様もシオン様も大切だもの!」
グッとガッツポーズをとる、白亜。
「大切な人は、私が守るわ!だから、協力してちょうだい!私1人で全て守れると思う程、無謀じゃないの」
顔を見合わせる、朱里と朱花。その表情は明るい。穏やかに微笑んでいる、茶希。
いつの間にか、水都もにこにこしている。夕海・黄砂もニカッと笑っていた。
7人で円陣を組み、頑張ろう!オー!とか叫んでいた。
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