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皆で気合いを入れた後、顔を見合わせ、笑い合う。
「なんだか、久しぶりだな」
不意に、茶希が口を開いた。
「何が?」
白亜が尋ねる。
「いや、俺達はなんだかんだ仕事で忙しくて、こんな風に全員揃って話をするの、いつぶりかなってさ」
茶希は穏やかな笑顔を見せ、白亜は少し泣きそうな表情になった。
「白亜ちゃん?」
「白亜?」
「白亜…?」
泣き出しそうな白亜に、それぞれ心配そうに声をかけた。
白亜はグッと顔を上げ、無理矢理笑顔を見せた。
「ううん。大切なことだったのに、私も、少しだけ過去に囚われていたみたい。本当に、一番大事なのは、過去に何があったかじゃなく、今なのに」
紅に小さな頃から面倒を見てもらっていた、4人。こうして集まって、悪戯をしたり、沢山の遊びをした。
ためらいなく、友人と言える関係。友人であり、家族であり、互いにとって、大切な人。少なくとも、白亜はそう思っている。
知っていた筈なのに。簡単に、幸せは崩れてしまうこと。なのに、こうやって、皆で話す時間すらとっていなかった。
その事実が、ひどく白亜を打ちのめした。
彼女はもういないのに、死してなお、鮮明な雪白の記憶。
彩国の姫たちに継がれた記憶。
白亜も少なからず囚われていた。
「でも、貴方達にも知っていて欲しい」
白亜は3人に、手を伸ばす。
これから行く、鋼は、紅にとって悲しい記憶の場所だから。
知っていて欲しい。きっと、今の紅を助けるヒントになる。
そう、白亜は思った。もとより今日はそのつもりで朱花に無理を言って、全員集合させたのだ。
本当は、城の地下の聖域が一番だが、この人数で城に忍び込むのは難しい。
「水都」
「はぁい。私なら、大丈夫よ」
にこにこと水都は笑っていた。
「ありがとう。皆に知っていて欲しいの。もう一つの、炎の魔女の物語。紅様の、過去を」
白亜の言葉に、全員異論は無かった。
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