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私は可愛い息子をもう一度説得しようと茶希の部屋を訪れた。
「茶希?ちょっと話が…」
部屋のドアを開けると、勢いよく風が吹いてきた。
「茶希?」
部屋には誰もおらず、窓が開いていた。荷造りも途中のようだ。
「珍しいわね」
茶希はいわゆる神経質なタイプなので、物事を途中にするのをひどく嫌う。何かあったのだろうか。
「何がだ?」
「きゃあ!」
後ろから声をかけられ、すごくびっくりした。全く気配をかんじなかった。
「別に普通に声をかけただけだろうが」
「考え事をしていたからです。いきなり後ろから声がしたら、普通は驚きます」
シオンにぷぅっと膨れてみせた。シオンはゲラゲラ笑っていた。
とりあえず茶希の部屋の窓を閉めようとして、綺麗な月が目に入った。
何故だろう。それはきっと、気まぐれだった。
「シオン」
「ん?」
「少し、散歩しない?月が綺麗よ」
「ああ、構わない」
それは、きっと気まぐれだった。だけど、大切なことだった。
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