第15幕

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 私は可愛い息子をもう一度説得しようと茶希の部屋を訪れた。 「茶希?ちょっと話が…」  部屋のドアを開けると、勢いよく風が吹いてきた。 「茶希?」  部屋には誰もおらず、窓が開いていた。荷造りも途中のようだ。 「珍しいわね」  茶希はいわゆる神経質なタイプなので、物事を途中にするのをひどく嫌う。何かあったのだろうか。 「何がだ?」 「きゃあ!」  後ろから声をかけられ、すごくびっくりした。全く気配をかんじなかった。 「別に普通に声をかけただけだろうが」 「考え事をしていたからです。いきなり後ろから声がしたら、普通は驚きます」  シオンにぷぅっと膨れてみせた。シオンはゲラゲラ笑っていた。  とりあえず茶希の部屋の窓を閉めようとして、綺麗な月が目に入った。  何故だろう。それはきっと、気まぐれだった。 「シオン」 「ん?」 「少し、散歩しない?月が綺麗よ」 「ああ、構わない」  それは、きっと気まぐれだった。だけど、大切なことだった。
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