第15幕

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 シオンを連れて、私は森を歩いた。道は木々が教えてくれる。  実は私はかなりの方向音痴であり、私の精霊・翠との契約で木々の声を聴けるようにしている。森の中での迷子はヘタをすれば命がけだ。だが、木々の案内のおかげで、暗闇の中でも道に迷うことは無い  森を抜け、目的地にたどり着く。  赤色が一面に広がる。鮮やかな、あか。悪夢のようにおぞましく、美しい。あの人が作った『紅』の花畑。  足が、震えたのには気付かないフリをした。ここは、私が好きだった人が殺された場所。私はこの場所が大好きだった。  私が、私を無くした場所。  今まで、あの日から来ることができなかった場所。  今は、大嫌いな場所。 「ここは…」  シオンは驚いた様子だった。 「綺麗でしょ」  私は極力平静を装い、笑ってみせた。  綺麗だなんて少しも思えない。赤なんて、大嫌いだ。 「無理すんな」  くしゃっとシオンは私の頭を優しく撫でた。ズルいと思った。シオンは、優しい。 「どうしてそんなに私に優しくするの。私にそんな資格、無いのに。私は、人殺しなのに」  優しくされると、泣きたくなる。シオンは優しくて、私に甘い。 「そんなん俺様がしたいからに決まってるだろ。大体、それを言うなら俺だって戦場に出てた事がある。俺だって人殺しだ。それで?紅は俺を嫌うか?人殺しだと。それとも、仲間だと安心するか?」 「私はシオンよりずっと沢山の人を…」 「数なんざ関係無い。人殺しは人殺しだ。一生消えない」 「そうね」  私は同意した。数は問題ではない。  罪は消えない。消えることはない。  たとえ、500年が経ったとしても。  忘れてはいけない。  忘れることなど出来ない。
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