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「けどな?」
「きゃあ!?」
グッとシオンは私を抱き上げた。小さな子供に高い高いをするみたいに。シオンが下に見える。
「お前は気にしすぎだ。忘れちゃいけないだろうが、戦場にいる以上は、覚悟の上だ。殺さなきゃ、殺される。恨むのは筋違いだ。死なせたくなきゃ、戦争を止めるか、行かせなきゃいい」
「でも」
「お前は頑固だよな。年くってるからか知らねーけど、それで子供を心配させてどーすんだよ」
「え?」
びっくりした。誰の事だろうか。
「…もしかして、気づいてなかったのか?」
「子供って、茶希?」
「ああ。後は彩国国王とか、白亜とか、朱花と朱里もだな。国王なんか俺にアンタを頼むとか頭を下げたぜ」
「なっ!?」
なんでそんな事をするのだろうか。
私は別に辛い事も無いのに。何か心配されるような事をしただろうか。
「紅。お前、無理してるだろ。今も。いつからか、わかんねーけど。本当は、ここに来るの、辛いんだろ?無理すんな。俺は、紫苑がここで死んだ事を知ってる」
もう何も考えられず、ただひたすらシオンにしがみつき、声が出なくなるまで泣いた。
色々疑問はあったけど、全てを吹き飛ばす程の強烈な感情に支配された。
それは『悲しみ』
紫苑の死を、私は受け入れる事が出来ず、紫苑が死んだ瞬間に、私の心は砕け散った。
私は紫苑が好きだった。心が砕けた今はもう、それがどんな感情だったか解らない。
私の初恋は想いを告げる事さえ出来ず、消化不良のままだ。
私の初恋は、終わることすら許されない。
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