431人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなことを考えていたら、もう仕事に行かなければならない時間。
片付けを済ませ、慌ただしく外へ。
家のドアを開けると、懐かしい面影。咄嗟に『雪白(ユキシロ)』と告げかけて、口をつぐむ。
違う。
この子は白亜(ハクア)。この国の、姫だ。
「ごきげんよう」
ゆるいウェーブの、青銀の髪が揺れる。生気に満ちた、紫水晶の瞳。左肩に、魚の鱗のような刻印。彼女は水の精霊の契約者。
涼やかな声で挨拶すると、ふわりとオレンジのスカートを持ち上げ、礼をとった。
洗練された、優雅な仕草。
白亜は、お日様みたいに人の心を暖かくする柔らかい笑顔を私たちに向けた。
最初のコメントを投稿しよう!