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びす!
「ごきげんよう、じゃないでしょう!」
後ろにいた茶希が、私の頭上から白亜に向けチョップをかましていた。
「痛ーい!暴力反対ですわ!!同じ女性に育てられたのに、どうして茶希はこんなに乱暴なのでしょう!!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ、姫様。この間、キレて研究所の壁壊したのは誰だ」
おほほほほ、あはははは、と笑い合う2人。
…狭い。私を間に挟んだまま、笑い続けている。
「…とぉ」
ガクッと茶希がよろける。どうやら後ろの朱里がひざかっくんをやったようだ。
「何すんだ!朱里!!」
当然怒る、茶希。朱里はこういうことは滅多にしないので珍しい。
「時間、ない…から」
一斉に時計を見る。
遅刻だ!!!!!!
「もっと早く言えよ!」
茶希の叫びと共に、全員全力疾走する。
小さいぶん、足が短く(泣)、私が遅れてしまう。とはいえ、頑張ればなんとか間に合うだろう。
朱里が私に気づき、茶希に先に行くよう促す。茶希は研究所だから、私達より勤め先が遠い。
私達の勤め先である城は、見えているのだが、崖を迂回しなければならない。
私のほうに戻ってきた朱里は、何故か白亜を荷物みたいに抱えていた。私も片手で抱き上げられ、
「…黄砂(キサ)…大ばあちゃん、急ぐ、よ」
朱里が風の精霊・黄砂を喚び、風を纏う。
明るい金髪がなびく。砂漠の風の精霊らしく、砂の海を思わせる、琥珀の瞳。背中の大きな羽根が朱里の呼びかけに応え、羽ばたく。
「任せとけ!」
朱里は黄砂の返事にうなずくと、私と白亜を抱えたまま、飛んだ。
…というか、崖から飛び降りた。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「ヒャッホォ!!」
…流石の白亜も叫んでいる。泣きそうだ。対して、黄砂は楽しそうだ。琥珀の瞳が煌めいている。
いつも私より後に出るのに先についてるのはこのためか。妙に私は落ち着いていた。
自分より白亜がびっくりして大騒ぎしているからかもしれない。
強い風が衝撃を緩和し、城の中庭に着地した。
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