日常

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「朱梨(あかり)ちゃん、向こうのお客さんが呼んでるわよ」 「あ、はい」 店のママに呼ばれて笑顔で応えると、私は今まで横に座って居た客に、ちょっと失礼しますと声を掛けて席を後にする。 ここは俗に言う、ニューハーフの店だ。 そこで働く私も例外ではなく、そう呼ばれる人種なわけだが、私はそう呼ばれることがあまり好きではない。 先ほど呼ばれた店で使う偽りの名前にも違和感はあるが、店で本名を使う人はあまりいないと言うし、全てに置いての予防線のようなものだと、ママに言われて漸く、仕事にも名前にも馴染んできた所だった。 私の本当の名前は明(あきら)という。 源氏名はそのまま読み方を変えて別の漢字を当てたものだ。
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