第一章 胎動

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「私が先に入るが気を抜くなよ。」 シルドは無言でうなづき、仲間の後に続いて扉の中に入った。 神殿内に入るとそこは大きなホールになっていて、天井は吹き抜けになっていた。 シルド達は階上から発見されぬよう、壁づたいにホールの奥に続く通路へと進んだ。 進んだ先は階段になっていて、 登った先は一直線の通路になっていた。 「この通路の先の階段を登った所が目標の部屋だったはずです。」 シルドは足を止め、神殿の構造を説明した。 「そうか。しかしなぜそんなに詳しいんだ?」 疑問に思った仲間がシルドに問いかけるが、無言のまま顔を反らした。 「……行きましょう。」 シルドは仲間を促し再び走り出すが、通路の先で光が一瞬走った。 反射的に身を隠し通路の先を見つめると、二名の兵士が灯りを手に階段付近を見張っていた。 入口と違いこれ以上は身を隠す場所もなく、投擲でも届く距離ではない。 どうするものかと策を巡らせていたら、後方からも金属音の足音と光が近付いてきた。 「後ろからも……くっ!こうなったら……」 徐々に迫る足音を背に、シルドは階段に向かい駆け出した。 仲間も後に続き、投擲用のナイフを構える。 「……ん!誰だ!?」 足音に気付いたのか、見張りが声を上げる。 見張りは、突然の襲撃だったが混乱した様子もなく、それぞれ身構える。 シルドは右前面に位置する兵士の振り下ろしを流れるように避け、後方にいる左の兵士に向かう。 右の兵士は直ぐ様振り向き追おうとしたが、首裏から何かが刺さり、それも不可能な事だと知った。 右の兵士の喉元に突き出たナイフの返り血を受けながら、 シルドは左の兵士を背後から組み付き、手にした剣で喉元を切り裂いた。 すると後方から来ていた兵士が騒動に気が付いたのか、此方に向かって来る。 「敵襲だぁ!アサシン二名だぁ!!」 すると兵士は、神殿中に響き渡りそうな ピィィと高い音の笛を吹いた。 「マズイ……撤退だ!」 二人はこの場から走り去ろうとするが、すでに数名の兵士が駆け付けて来ており、逃走は最早不可能に近かった。  
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