第一章 胎動

7/13
前へ
/23ページ
次へ
―――神々が世界を創造したとされる創世記から数え、 時は星暦12998年。 この世界(オクティル)には三つの大きな大陸がある。 中央大陸の東南部を自治する マテニ教会の《神聖都ジン》 国民のほとんどが 【再生の女神マテニ】を信仰している。 そしてマテニが定めた法を守り、朝晩の祈りと週に一度の神殿への礼拝を絶対に欠かさない。 そして聖祭は国民全員が祝い、参加しない者は誰一人としていない。 この国民性が神聖都と呼ばれる所以である。 宗教が国を統治している法権制度で、再生の女神マテニの生まれ変わりとする聖女を象徴とし、最高司祭を中心に教会が治める。 そして教会は自衛の為、聖騎士団を擁している。 従順なる国民性、屈強な聖騎士団を持つマテニ教会は、中央大陸では最強の勢力であろう。 中央大陸の北東に位置する大陸。 この大陸全てを領土とする 《機国オウカ》 ここ数十年、ジンを始めとする数々の国が領土や利権などを、奪い争いあってきた。 しかしオウカは全ての争いに一切干渉をする事がなかった。 そればかりか百年近く、他国との外交も行なっていない。 其れ故、沈黙の大国と呼ばれた。 独自の文化、技術を持っていて、特に遥か昔に失われたとする機械技術は世界一と噂される。 大陸の海岸沿いを、空にも届かんばかりの金属製の壁で覆い、海上からでも内部を伺い知る事もできない。 時たま見える最新鋭の飛空船だけが《機国オウカ》の情報である。 そして残る一つの大陸。 魔大陸は中央大陸の北西部に【浮遊】している。 中央大陸の北西部が浮上したとされる魔大陸にある国 《ウィスキン帝国》 多種族が暮らす魔大陸の中での唯一の国で、その歴史は世界の中で最も古いとされる。 小国ではあるが、多種族の様々な文明、力を使う為、他の大国にも引けを取らない軍事力を持つ。 中でも魔族、竜族の力を借りた特殊部隊は、二十年前のジンとの大戦の際には猛威を奮った。 魔大陸には数々の秘境、魔境があり、国土の全てを把握している訳ではない。 地上との交通手段は主に、飛空船技術を用いる。 中央大陸西部に発着の砦を幾つか擁している。 竜に乗って降りて来るとも噂されるが定かではない。 他にも数々の国、部族や種族がいるが、世界はこの三つの国によりバランスを取っていていた。 しかし徐々にその天秤が崩壊へ向かって傾いていた。 シルドはその中心に自分がいるとは思いもせず―――
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加