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同日、1300時
シルド達一行は休憩を取る為、少し大きめの木々の片隅に腰をおろしていた。
昨夜から歩き詰めだった事と、ちょうど真上に挿しかかった太陽からの照りつけが一行の心身を共に疲労させた。
見張りを数名立たせ、ある者は食事を。
また、ある者は横になり、各々体を休めていた。
レイブは一本の木を背に目を閉じたまま座っていた。
何本か傷痕のある、壮年とは思えない若い顔を見てみたが、寝ているかどうかはわからなかった。
この隊長は数十年近く前から、戦場に身をおいていた為、寝ている時に近付こうものなら、直ぐ様目を覚まし剣を突き付けられると、仲間が苦笑いに体験談を話していたのを思いだした。
ミキシィは数名の仲間と共に食事をしながら談笑していた。
傍らを通ったシルドに気が付いて、手にしていたパンを投げてよこした。
シルド一言、ありがとう、と伝えるとミキシィは笑顔で軽く手で合図をくれた。
ミキシィは仲間達との話に戻った。
渡されたパンをかじりながら、片方の手にした水桶を、馬車に繋がれている馬達の前に置いた。
馬達は置かれた水桶に必死に顔を浸け、水を飲み始める。
その姿にシルドは思わず苦笑してしまった。
元の主人達から奪われて来た馬達だが、当の馬達は関係無いとばかりに与えられた水を飲む。
生きる為にはそんな事はどうでもいいのかも知れない……
と、思いふけっていると突然声を掛けられる。
「貴方様は何を想い、生きているのですか?」
突然の事で驚いたシルドだったが、その声が天幕が架り中が伺えない馬車から発せられたものだと気づく。
中にいるのは昨夜拉致され、馬車から自由にされない【聖女】のみである事を思いだした。
「……何が言いたい聖女様。
オレが馬に対して笑った事を言っているのか?」
シルドは自分が侮辱されたものと思い、自然と声色が荒くなる。
「そうではありません。
ただ貴方様の心の中が悲しみや悔みで包まれているように思えましたので……」
シルドの顔が驚きでみるみる歪んでゆく。
(な、なんだコイツは?何故そんな事がわかるんだ……)
思いの内を見透かされたのか、動揺しているのが目に見えてわかる。
するとまたシルドの様子を読んだかのように、聖女が声を掛けて来た。
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