何本も、線

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病院の心療内科に一緒に行った。診察室の前の長いすには十人くらいが座っていた。老若女性。たまたま男性は僕だけであった。 今、呼ばれた?って彼女に聞いてしまうくらい、ボソッと声が。 ボサボサ頭に恰幅のよい体型。蛭子さんに似てるからけして笑わないように、と事前に言われていたのが逆に災いし、場違いに吹き出しそうになる。 内容は、よく覚えていない。薬がいっぱいあって、それを飲むとちょっとは楽になる、くらいしか 彼女が楽になるなら、死ぬのでなければどんな方法でもいい、とさえ思った 診察を終えて温かいココアを飲みたいと思った。紙コップを持った手が震えてた、震えていた。 湯気の向こうに、彼女よりガリガリの女性が見えた。そのすぐ近くには非常に丸い青年が下卑たような雑誌を読んでいた。そして無特徴でどこにでもいそうな、僕。一呼吸するごとに体内にウイルスやら人の悪意やらが入っていく。
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