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目を見開き、恐怖のあまり顔を引き攣らせて、徐々に振り上げられる刀に敵三人は悲鳴を上げた。だが、その悲鳴は一分も掛からずに止んだ。 三人の下に赤い水溜りが出来上がっていく。 今までの戦いの一部始終を部屋の隅で縮こまりながら見ていた権蔵は震え上がり、顔色が真っ青になっている。 「ひッ!!…」 雨月が権蔵を見やれば、小さく悲鳴を上げた。 赤い液体を一振りして一歩歩みを進めた矢先、静止を求める声が響いた。 「待って!!」 部屋に駆け込んできた少年は、雨月を通り越して権蔵の前で両手を広げて、庇う姿勢を見せた。 「末吉ッ!」 「この人だけはッ、父さんだけは殺さないで!!」 イサル基、末吉は他の無残な者達の有様を見て、これから起こりうる状況を感じ取ったのだろう、たった一人の肉親を亡くしたくないとどこかで感じ飛び出したのだ。
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