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今も、恥ずかしくて仕方がない。
『向日葵の花言葉って、知ってる?』
急な質問に、間の抜けた声を上げてしまった気がする。
『え、あ、憧れ? ……とか?』
今思えば、男が花言葉を知ってるだなんて気持ちの悪い話かもしれない。向日葵の花言葉を知っていたのも、毎日向日葵を描いていたのも、キミが向日葵を好きだって知ってたからだったし。
『よく知ってるね! そんな佐々木くんには、これをあげよう!』
そう言ってくれたのが、今オレが見つめている向日葵の種だった。キミが向日葵の種をくれたことよりも、オレの名字を知っていてくれたことの方がすごく嬉しい。もし今、同窓会で会っても、多分あの時のことをキミは覚えてないだろうな。と、自虐的な事を考える。
『私も、向日葵と同じなんだよね』
キミが最後に言い残した言葉が、今でも気にかかる。あれは、どういう意味だったんだろう? キミはその言葉を呟いた後すぐに、オレにスケッチブックを渡して部活に戻ってしまったから、オレには答えはわからなかった。
そういう意味ではキミに会ってみたくないし、会ってみたい気もする。向日葵を見るたびに、その意味ありげな言葉を思い出す。
「ふぅ……」
キミからもらった向日葵が枯れて、種が出来たら聞いてみようか。その頃には、同窓会の通知がくるはずだから――もしかしたら、オレの事をキミは覚えていてくれるかもしれない。
なんて都合のいい話だろうと、自嘲的に笑って視線をテレビへと移す。
今となっては、答えのもらえない問いにオレは捕らわれる。
答えを握るのはただ一人。あの頃のキミだけ。
The end.
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