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『村』は、火に守られる。赤い火の灯し、村を囲む焚き火は命よりも大切なもの。
火を守る『守火人(もりひと)』は、雨の日も懸命に火を絶やさないよう働き続ける。
「『守火人』ですか……?」
赤茶色の髪の男は、火に薪をくべる黒髪の男性に『村』の外から話かけた。
「ああ、見てわからないかい……!?」
はじめはせっせと作業していた黒髪の男性だったがすぐに違和感に気付き、赤茶色の髪の男を驚いた顔で見る。
「あ、あんたッ! ど、どこから来たんだ!?」
幽霊でも見ているかのような表情で、黒髪の男性は叫ぶ。
あまりの出来事に、薪をカタンと落としてしまった。
「東の『村』から来ました……廻生(かい)と言います」
赤茶色の髪の男――廻生は、笑顔で会釈をした。
「と、とりあえず中に入りなさいッ……私は、ここを離れられないから……」
慌てて黒髪の男性は、廻生のために道を開ける。
「あ、すみません。ありがとうございます……」
廻生は黒髪の男性に再び会釈をすると、『村』の中に足を踏み入れる。
ヒラヒラと舞い飛んできた、桜の花びらが焚き火の炎で音も無く燃え尽きた……。
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