260人が本棚に入れています
本棚に追加
「『あるモノ』を……探しています」
「何かは、聞かないが……ソレを見つけ出す当てはあるのかな?」
「……いえ、全くありません」
そう言って顔を横に振る廻生を見ると、男性は空を見上げた。
「貴方は、『魔女』を知っているかな?」
笑顔で廻生を見ると、男性はゆっくりと歩き出す。廻生は置いていかれないように、男性を追いかけた。
「……文明を失わせた?」
「ああ、そうとも……言われているね。どんな力を持って文明を失わせたのか、今となってはわからないが……」
男性は、ある家の前で足を止めた。そして、廻生の方へと振り返る。
「私は、その『魔女』の血を引いているらしい……今年で齢八十になるが見ての通り……だ」
「実在していたのですか……」
廻生は驚きの声を上げる。ある村で『魔女』の話を聞いた時は、『口伝』上に出てくる伝説上の存在だと思っていた。
「……私が受け継いだモノは、不老なのだろう……いや、少しずつ老いているのだからそれは違うだろうな……」
男性は家に入り、男性の手より少し大きい紙を数十枚持って出てくる。
「ソレは……?」
「『クリサンセマム』という占いに使うカードだよ……母に仕込まれて、占いは得意でね……よかったら、貴方の行く先を占おう」
そう言うと、男性はその紙――『クリサンセマム』を扇のように広げた。
「……お願いします」
「そう気負わなくてもいい……道楽の占いだ。軽い道しるべだと思ってくれさえすればいい……」
最初のコメントを投稿しよう!