子犬とアヒルと、猫足のバスタブ

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  「雨降って地固まるってやつじゃないけど湿ってたらうまく作れるかなって」   手の甲で顔の砂を拭ったつもりがただ汚れを広げただけにすぎないのだが本人は気付いていない 意味合いが違うわ、と二度目の溜め息を吐きながら静祈は立ち上がった   「うちへいらっしゃい。どうせ美咲と喧嘩でもしたのでしょう?」   そう言うと輝に背中を向けて静祈はさっさと行ってしまう なんでわかったんだろう、と足りない頭を働かせていた輝は静祈の後ろ姿を母親についていく子犬のように追いかけていった                     「おじゃましまー…」 「貴方はバスルームへ直行よ」   社交辞令程度の挨拶も言い終わらぬうちに静祈は輝にそう告げる それもそうだ こんな泥だらけな姿で入られては部屋が汚れる 当然といえば当然なのだ   「私も入るから」   その一言で若干不満そうだった子犬は尻尾を振ってバスルームに入っていった
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