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けっしてメイジの言葉を疑っているわけではなかった。
初めて会った、私みたいな裸のクレリックの話を信じて、そこまで言ってくれる優しさが嬉しくもあった。
けれどすぐに返事ができない。
彼以外のキャラクターと、こんなにチャットをしたのも初めてで、定型文を探しながら選択するのに、どうしても時間がかかってしまう。
メイジの思いやりにこたえなければいけないという焦りが、余計にチャットを遅くしていた。
今の私の気持ちを伝えなければ!
『ありがとう』
違う!
これだけじゃない!
『私
すごく
嬉しいです』
そう。
話した時に感じた、この人に対する信頼感のような気持ち…
ちゃんと伝えなければいけない。
なのにチャットが上手く出来ないもどかしさ。
『私
はじめましてで
何もわかりません
けど
よろしく
お願いします』
こんな言葉しか出てこない。
それなのに…
『やったー!♪』
メイジが私の周りを走り回り
『ありがとう♪』
そんな…
私こそ…私のほうこそありがとうなのに。
『私のことは
Dと言ってください』
『D3』
『いえいえ
3はいらない』
『D』
『そう
それでOK』
『のんだのんだ』
『うーむ』
メイジが何か考えこんでいる。
『のの』
『クレリック3は
のの♪』
この瞬間から私は“のの”になった。
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