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ラプトは相変わらず人でいっぱいだった。
白チャットが街中を飛び交う。
この中から彼を探す事ができるだろうか…
私を探す事ができるだろうか…
今の私には、彼がどこにいるのか、ファイターで来るのかクレリックで来るのかさえわからない。
どうして電話で聞いておかなかったのかと、自分のとろさが嫌になる。
狭いラプトの街を行ったり来たりしながら、みじめな想いでテントの中に座り込んだ。
こんなに人がいるのに、私はひとりぼっちの裸のファイター。
話しかけてくれる人は誰一人いない。
さっきまでの彼に会えるという喜びは、いつの間にか虚しさに変わっていた。
彼はどこからラプトに来るのだろう。
私の行く事の出来ない遠い街にいるのだろうか。
今更ながら、この世界での彼との距離が身に染みた。
『お待たせ』
Pの点滅。
若草色のローブのクレリック。
初めて会った時とローブの色が違うけれど、たしかに彼のクレリックの名前だ。
やっと会えた。
ホッとすると同時に、何故か不安な気持ちが沸き上がる。
『どうしたの?』
なんでもない。
なんでもないの。
この気持ち…うまく伝えられない。
会えた嬉しさよりも、孤独感だけが心に残る。
この時感じた孤独感がどこからくるのか、自分でもまだわからなかった。
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