空に還った君

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  *空に還った君*     曇り空から小さい雪が舞い落ちてきて 傘もささない僕の肩を白く染めていく   今年ももう初雪の季節 この季節になっては 白い息を吐きながら 隣りで笑っていた君   いつからか 君の横顔は雪のように散って 僕のそばから消えてしまっていた   これから先も僕は たった1人でこの道を歩いていく   時々感じる冬の気配に寂しさを覚えながら もう感じることのない君の気配に悲しさを抱きながら   僕は知っているよ 君が僕に最後の笑顔を見せたその日   君は空に還ったんだと 知っているよ   分かっているよ   だけどあふれ出すこの気持ちは止めることが出来ない   あの日握った両手からすり抜けてこぼれて 静かに眠った君 最後に涙を流した君 それでも最後に笑った君   見上げた空は僕の涙の向こうで切ない色に揺れていた   君も空で泣いていたのかな?   今日降る雪を見ていると思い出す 積もった雪を見て子供みたいにはしゃいでいた君を 冬の空気は好きだと笑っていた君を   大好きな君を   雪がゆらめくたびに   足もとに積もっていくたびに   君が僕に何か言葉を送ってくれている気がした   今は遠いけどすぐそこにある 空に還った君  
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