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たった七日間だけの
人生の中で
声を枯らして歌って
必死に自分の存在を
証明しようとする蝉の姿
何をするわけでもなく
毎日を生きる私の心に
何かを残して空に飛んだ
窮屈な毎日に嫌気がさして
上がる気温と対照的に落ちる気分
学校の窓から見える
空の狭さにも飽きたし
自分で自分が
見えなくなりそうだった
帰り道
公園の一本の木に
しがみつく小さい蝉を見た
何年もの間土の中で眠っていて
やっと出てこられた地上の世界
暗い土の中で
どれだけ明るいこの空の色を
願ったんだろう
それでも生きられるのは
七日間だけ
空から降り注ぐように響く
うるさいくらいの蝉の声だけど
しっかりその声に耳を澄ませば
蝉たちの叫びが聞こえる
生きたいという叫びが聞こえる
きっと小さなその体では
この空は
本当に本当に大きく
感じられるのだろう
きっと透き通る両翼に
空の色を映して
自由に飛ぶのは
気持ちがいいんだろう
そしてきっと最後まで
声にならない声で
もっと生きたいと
叫んでいるのだろう
たった七日間だけの
人生の中で
声を枯らして歌って
自分の生きた道筋を
伝えようとする蝉の姿
ただじっと立ち止まる
私の足元に
力なく落ちてきた蝉も
きっと今日で
空を見るのが
最後になるんだろう
やり残したことはないか
もう空を飛ばなくてもいいのか
何となく心の中で
蝉に質問してみた
そんな私の言葉に応えるように
足元の蝉は空に羽広げ
飛んでいった
最後の力を振り絞って
私の心に
しっかり生きろ と
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