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ゆらりとキャンドルの炎が頼りなく揺れ、窓から欠けた月が部屋の中を覗き込んでいる。
所々にヒビが目立つ廃墟の屋敷。
その一室で仄かな光に照らされながら、二人の少女が腰を下ろしていた。
少女達は革表紙の分厚い本と、床に描かれた模様を見比べている。二つに描かれているのは線と文字が絡み合い、複雑な六芒星を成している魔法陣だ。
元々、本に描かれていた物を少女達が描き移したのだろう。
チョークの粉を叩き落としながら、ショートカットの金髪の少女が、満足そうな笑みを浮かべる。
「よしッ! これで後は呪文を唱えればいいだけね。ソフィア、呪文は読めそう?」
意気揚々とした口調に、本に眼を落としていた甘栗色の髪の少女が顔を上げた。
ゆったりと纏められた二つの三つ編みが揺れ、空色の眼には不安の影が差している。
気の強そうな金髪の少女とは対照的に、のんびりとした雰囲気の少女だ。
二人は闇に紛れやすい黒いローブを、私服の上から身に着けていた。ローブの左胸にある赤い校章から、彼女達が学生である事が分かる。
ソフィアと呼ばれた少女は頬に手を当てると可愛らしく首を傾げ、どこかのんびりと応じた。
「読めるには読めるんだけどぉ……。訳せないからぁ。何が出て来るのか、分からないのよぅ。ねぇ、リゼル。この召還式は、やっぱり危ないかもぉ……」
「大丈夫だって。相変わらずソフィアは心配性だなあ。相応の力量がなければ喚び出せないって、教授も言ってたじゃない」
リゼルは安心させようとしたが、それでもソフィアは不安そうに首を傾げたままだ。
「そうなんだけどぉ……。召還式を描き終わってから、本に呪文の文が出て来るのって、やっぱり変なのよぅ……」
再び本に眼を落としたソフィアは考え込んだ。
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