それは、満月の夜だった

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その日僕は、暗い気持ちで夜道を歩いていた。 学校でのいじめが日に日にひどくなり、追い詰められていた。 手にはロープ。 そう、首を吊ろうとしていたのだ。 (お父さんお母さん、ゴメンナサイ) 少しだけ、両親が泣き崩れる姿が頭の中に浮かんだが、それ以上に、この地獄から解放されたかった。 たどり着いた場所は、とある河原。 桜の木が並んでいるため、春先にはよい花見場となる。 (さあ、どの木を使おうかな) 月明かりに照らされた古木達は、なんとなく幻想的だ。 ここが、自分の知らない場所ではないかと錯覚しそうになる。 と、ふいに、空気が変わった。
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