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ガタン ゴトン …
電車が小刻みに揺れ、窓の外は滑るように流れていく。
乗客の少ない車両。二人の女性の注目を集めている人間がいた。
「ねぇ、あの子格好良くない?」
「でも男の子かなぁ?中性的だよね」
噂されている人間は向かいの席に座っていた。
短い焦げ茶髪、泣きボクロ、顔は悪いほうではない。
噂されている当人が二人に気付き、ニッコリと微笑みを浮かべた。
「きゃっ♪」
「爽やかー」
二人はキャッキャッと笑った。
さて、お気付きの方もいるだろう。
この人間の名は 陸 。
れっきとした女である。
(ふぅ…ったく、五年ぶりの再会日だってーのに)
あの事件が終わった数日後、春休みに陸は東京へと転校していった。
あの事件が…、五人の絆を一層深めたといっても過言ではない。
陸は口の端に笑みを浮かべた。
何度考えても、夢のような出来事だ。
あの日…やけに空が高くて…
★
五年前、子供達の間では一つの噂話が流行っていた。
“約束の塔”
そこに友達と行けば、永遠の友情が手に入る。
そして、陸達、五人は約束の塔を見つけた。
しかし…そこは悪魔の巣。
塔の主人の真菜という少女、その正体は子供達の魂を食らう化け物、怨念だった。
だが、塔にいた少年達、幽霊となってしまった寺門と秀二が助けてくれ、真菜を倒すことができ、二人も体を取り戻して現実に帰ることができた。
作り話のようで、本当の話である。
★
(さぁ、久しぶりに帰るんだ…俺の時間、俺の故郷に…)
電車は静かに、千葉へと走っていく…。
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